堤焼(つつみやき)とは?特徴や体験・購入できる場所などを紹介

宮城県知事指定伝統的工芸品に指定区分されている堤焼。
宮城県の堤町で作られていた堤焼には、300年以上の歴史があります。
しかし、そもそもで堤焼とは、一体どのようなものでしょうか。
この記事は、以下のことを詳しく解説します。
・堤焼とは一体どのようなものか
・堤焼の特徴とは
・堤焼の種類は、何になるか
・堤焼の窯元や現在の作家について
堤焼について詳しく知りたい方は、是非参考にして下さい。

そもそも堤焼とは?堤焼の歴史から製法まで詳しく解説

堤焼乾馬窯

堤焼は、300年以上の歴史を持つ焼き物です。
堤焼には、どのような歴史背景があるのでしょうか。

堤焼の歴史

堤焼は、宮城県の仙台市青葉区にあった堤町にかまどがあったことから、「堤焼」という名前がつきました。
堤焼の始まりは、江戸時代にまで遡ります。
奥州街道の北に堤町があり、北の守りとして足軽武士を住まわせ、足軽町が形成されました。
足軽武士達は、近隣で採れる粘土を使用して、土人形や器を作って販売してたことが始まりです。
また、堤焼の前は、粘土を採取していた場所が杉山台であったことから杉山焼と呼ばれていました。
そして、1688年〜1704年頃に、陶工の上村万右衛門を仙台藩の四代目藩主であった伊達綱村が指導に呼びかけられ、釉薬を施した茶器などの陶器技術が伝えられました。
陶器技術が伝えられたことにより、焼き物の町としての基礎が築かれます。
その後、作られた茶器は贈答品として使用され、後々大名などのお偉い方への献上品として用いられるようになりました。
そして、堤焼の生活雑器は、明治時代には東北まで流通をされるようになり人々の間で日常的に使用されるようになった背景があります。

堤焼の製法

堤焼の製法は、以下です。

①土造り

台原粘土層から掘り出した粘土を山にしてねかせ、粘土山から粘土を削り出します。
その後、削り出した粘土を水でうるかし、ミキサーで溶かします。
さらに、木の枝や根、石などの不純物を取り除くために、ふるいに掛けた後、水槽に溜め込み沈殿させ、数ヶ月ねかせます。
水槽にねかせておいた土の水を捨て、素焼きの鉢に入れて日陰で数日乾燥させ、土練機に通し、室(むろ)に移して1年以上ねかせます。
室とは、外気を防ぐための特別な構造をした場所です。

②土練り

ねかせた粘土の固さを均一にし、空気を抜きます。
そして、粘土をしめ、ひび割れを防ぎます。

③成形(荒練り・菊練り)

小物製作(食器・花入など)は、主にロクロで成形を行い、大物製作(大壷・大甕など)棒ひも造りで成形を行います。
棒ひも造りとは、棒を輪積みにしてひねりあげ、一段ずつ足していき、たたき板でたたき、粘土をしめながら形をととのえていきます。
そして、作り手の他に、補助が一人ロクロをまわします。

④仕上げ

水挽したものを2、3日ゆっくりと乾燥させ、5分乾き程度のところで高台を削りだします。
作品をシッタに固定し、カンナや竹べらで削ります。

⑤乾燥

小物は1週間程度かけて乾燥させます。
また、大物はひび割れを防ぐため、室(むろ)で1ヵ月以上かけてゆっくりと乾かします。

⑥素焼き

釉薬(ゆうやく)を掛ける際の型崩れを防いだり、釉薬の定着を良くするため、約800度で焼成します。
釉薬とは、ガラス質の粉末です。
素焼の陶磁器の表面に光沢出しや液体のしみ込むのを防ぐのに利用します。

⑦施釉

施釉とは、水漏れや汚れを防いで硬度を強めます。器の透明度や色彩の美しさを表します。
素焼きを行った陶器に釉薬をかけます。
堤焼の代表的な海鼠釉の原料は、南光台あまさや根白石の早坂岩、三ヶ森岩、鷺ヶ森岩、籾殻灰(もみがらはい)や木炭 などです。

⑧本焼き

1,250℃前後まで温度を上げ焼成します。
この時に、釉薬は焼成することで粘土の表面と溶け合い、ガラス質となって水分の浸透や汚れを防ぎます。

参考: Google Art&Culturehttps://artsandculture.google.com/exhibit/nwLi8PaUb55xKA?hl=ja
以上の製法で、堤焼が作られます。

堤焼の特徴は?

堤焼乾馬窯

素朴さと力強さを感じさせる堤焼。
堤焼の特徴は、仙台で採れる粗い良質な土と黒と白の釉薬を流し掛けた「海鼠釉(なまこゆう)」で堤焼毒独自の特色を出します。
また、二重に流し掛けることにより、釉薬が化学反応を起こすことで、表面に濃淡が発色し、斑紋・流紋が出てきます。
このような特徴があったことで、民芸の父と呼ばれている柳宗悦にも「東北を代表する民窯」と注目をされました。
さらに、堤焼は全てが手作業です。
作り手によって、堤焼の形や模様が違ってくるため、同じものは1つとしてありません。
堤焼は、作り手の個性やこだわりを楽しむことが出来ます。

堤焼の種類は?

堤焼乾馬窯

焼き物には、土器や磁器など様々な種類があります。
焼き物の種類は、以下のように分類されます。

陶器
原料:粘土
釉薬の有無:有
吸水性:有
焼き方の温度:800℃〜1250℃
磁器
原料:石もの
釉薬の有無:有
吸水性:無
焼き方の温度:1200℃〜1400℃
土器
原料:粘土
釉薬の有無:無
吸水性:有
焼き方の温度:700℃〜800℃
炻器(せっき)
原料:粘土
釉薬の有無:無
吸水性:無
焼き方の温度:1200℃〜1300℃

参考:ことくらべ(https://kotokurabe.com/ceramic/)
以上の表から、釉薬の使用していることや焼成温度が1000度以上のため、堤焼の種類は陶器に分類されます。

堤焼の窯元・作家は?

堤焼の歴史から特徴まで解説をしていきました。
では、堤焼の窯元や作家はどのようなものでしょうか。

堤焼の窯元

堤焼の窯元は、「堤焼乾馬窯」で、現在は仙台市泉区に場所を移しています。
最盛期には、30件近く窯があったと言われていますが昭和30年以降は、生活様式の変化に伴って衰退をしてしまいました。
理由は、都市化による窯の煙や煤など公害問題が原因で、昭和50年代には堤町にある全ての窯の火が落ちてしまいました。
そのため、堤焼の窯元は「堤焼乾馬窯」のみとなっております。

堤焼乾馬窯の作家

堤焼乾馬窯は、1856年に江戸の陶工である三浦乾也を招聘したことが最初です。
そして、庄子源七郎義忠(初代)が三浦乾也から教えを受け、「乾」の1文字を受け取り「乾馬(けんば)」を名乗ったことから始まりました。
そして、秘伝書である「乾山秘書」を基に堤焼が生み出されました。
初代から4代目である針生乾馬に一貫してこだわった作陶が続けられています。
また、現在は平成29年に「乾馬」を襲名した四代乾馬の長男である5代目・次男「和馬」さん・孫「峻」さんが、堤焼の技術と伝統を繋いでいます。

まとめ

堤焼は、宮城県仙台市で生まれた300年以上の歴史を持つ陶器です。
伊達家や家臣への贈答品から大名や公家などへの献上品として重宝されていた堤焼。
明治時代には生活雑器として東北各地にて流通し、人々の日常生活の中でも使用されるようになるという深い歴史を持っています。
堤焼の特徴は、仙台で採れる粗い良質な土と黒と白の釉薬を流し掛けた「海鼠釉(なまこゆう)」で、独自の特色をしています。
しかし公害が原因で、堤町にある全ての窯の火は落ちてしまい、現在の堤焼の唯一の窯元は「堤焼乾馬窯」です。
後継者の方が、現在も堤焼の技術と伝統を繋いでいます。
また、堤焼は全て手作業で作られているため作り手のこだわりや個性などを楽しむことが出来ます。
素朴さと力強さを兼ね備えている堤焼を是非、ご覧になって下さい。